どうも、丹内です。この記事ではアニメダイナミックコードと同じ楽しみ方ができる、つまり
- クオリティが低すぎて逆に楽しめる
- 演出や脚本が攻めすぎていて逆に面白い
ような作品を紹介したいと思います。今回は後者に相当、2014夏アニメ「グラスリップ」です!
グラスリップについて
グラスリップですが、あらすじを簡単に書くと「高校生の友人4人と日常を過ごしていた主人公の元に、未来の声が聞こえるという男子が転校してくる。そこから主人公の身にも未来予知めいた現象が起こっていく。」というものです。
まず主人公の深水透子は高校生の男2人・女3人(本人含む)のグループで福井の田舎生活を楽しく過ごていました。また思春期の男女グループの例に漏れず、この時点で恋愛感情の矢印はあちこちで発生しています。
しかしここに転校生の男一人が関わってきた事により、平穏な関係性が少しずつこじれ始めます。要するに典型的な男女グループによる青春恋愛アニメと言えるでしょう。ところが……
とにかく訳の分からない演出
この作品はごく普通の日常シーンというのも数多く存在するんですが、その一方で「訳のわからない謎演出・謎会話」もしょっちゅう繰り広げられます。見ていて↓のように感じるシーンがとにかく多いです。
- 「急に何言ってんだこのキャラ?」
- 「今の会話ってどういう意図があったの?」
- 「なんか急に○○しだしたんだけどどういう事?」
- 「今の演出わざわざ挟む必要あった?」
ダイナミックコードで例えると第1話冒頭にあった「ワイパーがメトロノームに切り替わる演出」、
こういったものが作中ひんぱんに挟まれると言えば分かりやすいでしょうか。さらに補足すると第2話の「ふっリレー」、
こういう「なんか通じ合ってるけど視聴者からしたら意味が分らない会話」もあちこちで繰り広げられます。
視聴者は皆普通にドロドロ恋愛アニメを楽しむつもりで鑑賞するも、いちいち意味不明なシーンにしょっちゅう脳をかき乱されてしまう。要するにこの作品は「訳の分からない演出や会話を笑い飛ばしつつ楽しく鑑賞する」作品になっております。
全体的に意味不明となった原因
この作品が支離滅裂になった原因、そのほとんどが転校生の沖倉駆にあります。
せめて「この転校生がきっかけで男女関係に亀裂が入る」程度ならよかったんですが、この人物はいちいち発言や行動が哲学者じみている部分があり、
- 「自分から檻に入る動物はいない」という主人公に「それは彼ら(ニワトリ)に選択肢が不足しているからだよ」と初対面で説く(1話)
- 父親と住んでいるが、寝るときは何故か庭のテント(2話)
そのせいで「視聴者が考察を余儀なくされるパート」がいちいち多いです。
ただ裏を返せば、「この作品は彼の奇行を大いに楽しめるアニメ」と良いように解釈もできます。特に第7話のとあるシーンのインパクトは絶大なので、多少しんどくなっても頑張って見続けてください。
グラスリップの良いところ
前回取り上げたいもいもは尻上がりに面白くなるのですが、グラスリップは内容に期待しすぎると痛い目を見ます。しかし明確な長所はちゃんと存在していて、それが作画と背景美術です。
- 美男美女が多数登場、大きな作画崩壊の気配も無し
- 登場人物の動きが生き生きとしている
- 背景がことごとく美しく描かれる
特に3つ目の背景美術に関してはピカイチで、作品全体から「田舎の夏」感がこれでもかというほどに溢れています。
またBGMも作品の雰囲気と合ったものが多く、また時には話の流れでクラシック音楽がかかるシーンも少なからず存在します。そのあたりのゆったり時が流れるシーンはかなりの癒し効果がありました。
なのでドロドロ関係が基調となる作品でありながら、同時に落ち着いた空気感をも楽しめる作品です。そのおかげかこの作品を「雰囲気アニメ」として高く評価している方は少なくありません。
実は綿密な計算の元に作られていた演出
ここまで散々「演出が唐突すぎ」「会話が意味不明」などとこき下ろしてきましたが、"実は製作者の意図が随所にこめられた作品である"という事が考察勢により次々と明らかになっていきます。
そのグラスリップ考察記事の中でも、特にjoinus_fantotomoni氏の書かれたものは一線を画していました。
彼はグラスリップを50回※は見たという頭のおかしい人熱量の凄まじい方で、グラスリップ本編を様々な観点から文学・芸術その他知識のもと読み解いていきます。 ※今はもっと増えてるかも
考察を読むのは必ず本編視聴後に
「グラスリップ」が一部の視聴者からいくら茶化しても構わないおもちゃ扱いをされている現状に率直に言って私は腹を立てている。
↑はjoinus_fantotomoni氏(以下ジョイナス氏)が考察記事の中で述べた一文です。今まさにぼくはグラスリップを茶化しまくる記事を書いている訳なので胸に突き刺さります……
しかしそれでも、初見グラスリップはその意味不明さを全力で楽しむべきとぼくは考えています。なん民が常日頃から渇望する「制作側の意図しない狂気を感じ取れる」滅多にないエンタメ作品だからです。
ただせめてグラスリップは「最初から最後まで脚本が支離滅裂で意味不明な駄作」ではなく「制作側がひねり過ぎたせいで視聴者に何一つ意図が伝わらず、別の面で面白さが際立ってしまった怪作」だというリスペクトの欠片を頭の片隅に入れておいてください。
そしてグラスリップを茶化しまくって見れば見るほど、後になって考察記事を読んだ際に受けるショックも大きいものとなります。「本編」と「考察」で二度楽しめる作品だとぼくは考えております。
全話視聴後にまず読む考察記事
グラスリップを全話鑑賞し、続けて2周目を見るつもりも無いときたらまずはグラスリップはなぜつまらないのかを読んでください。文字数が比較的少なめで読みやすいです。
ぼくは元々グラスリップを理解したいとも思わず、その関係で考察記事にまったく興味がありませんでした。しかし氏の書く記事は単純にコラムとして面白いのか、一度読み始めてからは止まらなくなってしまいました。
上で挙げた考察記事を読んで、なおかつ長文でも問題ないという方は分かりやすいグラスリップ(前編)と分かりやすいグラスリップ(後編)を読みましょう。もちろんこれらの考察全てが正しいかはわかりませんが、ぼくらにとっては反論の余地があるない以前の問題でしょう。
特に後編では具体的なシーンをあげて解説もなされているため、突き付けられた難題を次々と答え合わせしているかのような爽快感がありました。是非とも最後まで読んでみてください。
そしてまだ考察が読み足りないという方はグラスリップ考察・感想まとめにある記事で補完しましょう。
これでグラスリップに関してかなり理解が深まるはずです。この後で気が向いたらグラスリップ本編もう1周するのもいいかもしれません、ニコニコの一挙放送もおそらく今後無さそうですしね……
まとめ
- 「グラスリップ」は意味不明な会話・演出を笑い飛ばしながら見るアニメ
- 特に転校生「沖倉駆」の言動が電波そのもの
- 顔の良いキャラが多い、作画も安定している
- 特に背景美術が見事で、そのおかげで作品全体に漂う"夏感"が凄まじい
- 支離滅裂かと思われた演出、実はわかる人にはわかる
とにもかくにもこのアニメは訳の分からない展開と電波じみた会話が多いです。しかしおかげでダイナミックコードファンには大いに楽しめる作品に仕上がっております!
それにこの作品はキャラクターや雰囲気を評価する人が少なからずいるようで、「酷評されてるけど自分は好き」「話の内容に目をつぶれば名作」等の意見もたまに見かけました。
グラスリップはいもいもみたく単純に中身を楽しみながら見る事が困難ではありますが、この作品は見終わった後に読む考察が楽しいです。それこそ漫画版ダイナミックコードを読んだ時のような感覚、いやそれ以上のモノを味わう事ができました。
世間では「人類には早すぎるアニメ」「味のしないガム」と酷評されながら、一部で「怪作」「壮大すぎる意欲作」などと評価されるこのグラスリップ。最初から気を張って観る必要はありませんので、ぜひゆるりと楽しんでみてください!
コメント